幕末の「一文銭」の価値

寛永通宝文銭


一一一   す々銭慶  |  一一 一   べ洩銭慶  |  右    一    済村銭右︵ |
      べ洩相応  |         くら相応  |  の         村々相同文 |
耳文銭 四 くら場四  |  文耳札銭 九 候さ場元  |  通    銭 四  よ洩場年久 |
白銭  月 候さ今辰  |  銭白   月 以ず今丑  |  仰      月  りら今同三 |
銭 九 十 以ず日年  |   銭 九 二 上べ日年  |  け 文銅札拾 廿  指さ日月年 |
 拾匁 四 上様よ四  |  壱壱壱匁 日  くよ九  |  ら 銭銭 匁 二  戻ずよ廿四 |
八弐八 日  触り月  |  文文匁八    候り月  |  れ    弐 日  すより五月 |
文文分    知左十  |  ににに分    且左二  |  候 壱壱壱分    べう立日︶ |
       ら書四  |  付付付     此書日  |  条 文文匁三    く触直拝  |
  銀    すの日  |          状の御  |  村 ににに厘    候知し上  |
  札    べ通御  |  鉄鉄鉄     急通触  |  中 付付付     以ら候御  |
右壱壱    くり触  |  銭銭銭     々り   |  洩         上す旨触  |
同匁匁    候立   |  八四九     順立   |  ら 鉄鉄鉄      べ銀之  |
 にに    且直   |  文文拾     達直   |  さ 銭銭銭      く札写  |
 付付    此し   |    六     せし   |  ず 四弐九      候場左  |
     赤 状候   |    文   赤 し候   |  よ 文文拾   箕三 且よ之  |
拾八九    急条   |          め条   |  う   弐      此り通  |
弐文拾  川 々右   |        川 済右   |  触   文   浦間 状申   |
文 六    順様   |          村様   |  知          急来   |
  文  大 達相   |        大 よ相   |  ら       牛勝 々り   |
     次 せ心   |        次 り心   |  さ       太  順候   |
     郎 し得   |        郎 指得   |  る       郎蔵 達条   |
       め其   |          戻其   |  べ          せ其   |
       済方   |          す方   |  く          し方   |
       村共   |           共   |  候          め共   |
       よ組   |           組   |              組   |
       り村   |           村   |                  |
       指    |           々   |                  |
       戻    |               |                  |
  
  右の古文書は、阿波国三好郡中庄村の庄屋さんの家に残されていたものです。徳島藩の郡代さんからのお達しを書き写したもので、一文銭の通用価値を領内に下達したものです。

  最初の文久3年(1863)の文書の先頭には、『銭拾匁弐分三厘』とありますが、これは「銭1貫文=銀10.23匁」の相場を指しています。銭1貫文は鉄銭1000文のことです。
  次の『札壱匁に付鉄銭九拾弐文』は、「阿波藩札銀1匁=鉄銭92文」のことです。
  次の『銅銭壱文に付鉄銭弐文』は、「銅の1文銭=鉄銭2文」とのことです。
  最後の『文銭壱文に付鉄銭四文』は、銅の1文銭のうちでも文銭は鉄銭4文になるとのことです。

  江戸後期から鉄の1文銭が大量に出回り、当初は銅の1文と同じ価値で通用していましがが、だんだん価値がさがり、このころには、銅の1文は鉄銭の2倍の価値で、文銭は4倍の価値で通用されるようになっていました。銅銭の中でも初期の文銭とその後のものでは差ができていたのです。
  この差は、その後もだんだん大きくなりました。
年月文銭銅銭耳白銭
文久3年4月22日4文2文 
慶応元年9月2日8文 4文
慶応3年4月14日12文 8文
慶応4年4月14日12文 8文
  (ここで「耳白銭」とは、背文銭より小型の銅銭を指しているようです。)
  なお、明治4年12月、明治政府は、「銅銭(文銭を含む)1枚=鉄銭16枚=1厘」と定めました。

阿波藩札銀1匁

【参考文献】
   田中合編、「阿波国三好郡中庄村庄屋処役用記」、1991


  銭貨の品位
2009.12.31