『謎の1セント硬貨』

向井万起男著 『謎の1セント硬貨』
講談社 2009
著者の向井万起男さんは、ある年のクリスマス・イブに、奥さん(宇宙飛行士の向井千秋さん)とアメリカの国内便に乗っていた。
そろそろ到着という頃、スチュワーデスがこんな放送をした。
■「みなさん、きょうファース・クラスのお客様方にご用意したシャンパンが1本余りました。この余った1本のシャンパンをエコノミー・クラスのお客様方のどなたかにクリスマス・プレゼントとして差し上げたいと思います。みなさんの中で一番古いペニーをお持ちの方にシャンパンを差し上げます。」
ペニーとは、アメリカの1セント硬貨のことである。 乗客のみんなが大騒ぎして一斉に自分の財布を取り出し始めた。 そのとき、1人の男性が
■「シャンパンは私が頂きだ! 私はスチール・ペニーを持っているんです!」
シャンパンはその人のものになったが、向井さんにとってはチンプンカンブンである。 鋼鉄で作られたペニーとはいったい何なんだ。
それから、好奇心と探究心の旺盛な向井さんの活躍が始まる。 インターネットとメールを駆使して、このコインの情報を調べた。
その結果(と多少の補足をしたの)が、次の通りである。
・1セント硬貨にリンカーンが登場したのは、1909年であり、そのころは青銅貨だった。
・ところが、第二次大戦のときに銅が払底し、1943年だけ亜鉛メッキの鋼鉄製の硬貨が発行された。これが通常「スチール・ペニー」と呼ばれている。
・翌年から再び青銅貨になり、1982年からは銅メッキの亜鉛製となって現在に至っている。

スチール・ペニー


このほかにも、アメリカ各地で体験して不思議に思ったことを、納得するまで調べるのである。
●トヨタ自動車の販売店には、どこにも大きな星条旗が掲げられている。 なぜ?
●交通事故があって、警察を電話で呼んだのに、警察は来てくれない。 なぜ?
●サウスウエスト航空は、機長は制服を着ているのに、他のスタッフは全員私服である。 なぜ?
●お店では、1個あたりの値段が、バラ売りのときより、パック売りのときの方が割高のときがある。 なぜ?

この本の副題は、「真実は細部に宿る in USA」である。 アメリカの雑学としては非常に面白い。

 2019.2.22