銀の価値

  19世紀までの世界の貨幣は、銀を本位とすることが多かったようです。
  銀の絶対的な価値の変遷を調べることにより、貨幣の価値を知ることができます。  価値を測るには、現代人にも理解できる対象で、定常的なデータがあるものが分かりやすいです。
  ここでは、銀1グラムが労働者の何日分の賃金か、また何リットルの穀物(小麦、米)を買うことができたかについて、古今東西の変遷をみてみました。
  ハンムラビ王の時代では、銀は極めて貴重なものだったようです。
  古代アテネから明治初期まで、2000年以上にわたって銀の価値に大きな変化はありません。 人の1日の労賃(これは1日の生活費を意味します)は、銀3〜5グラムです。 また、銀1グラムは穀物2リットル前後ですが、これは大人4日分の主食量に相当します。
  その後、明治になって銀の生産量が世界的に大幅増加し、価値は急激に下落しました。 貨幣が銀を本位とすることもなくなりました。
  
時代労働者の賃金銀1gの価値穀物の価格銀1gの価値備考
古代ハンムラビ王の時代
(前18世紀)
賃労働者、1日1/30シェケル2.6 日大麦1クル=1シェケル26リットル1シェケル=銀11.4g
1クル=300リットル
古代アテネ
(前5世紀)
建設労働者、1日1ドラクマ0.25日小麦1メディムノス=5〜6ドラクマ2.1〜2.5リットル1ドラクマ=銀4.0g
1メディムノス=40Kg
ローマ帝国
(1世紀)
農場労働者、1日1デナリウス0.26日小麦1モディウス=3/4デナリウス2.7リットル1デナリウス=銀3.9g
1モディウス=6.3Kg
中世
(12世紀)
労働者、1日200文0.27日米1石=銀2両1.3リットル1両=37g、1石=95リットル
銀1両=銭2000文
中世のロンドン
(14〜15世紀)
建築労働者、1日3〜4ペンス
建築職人、1日4〜6ペンス
0.2〜0.3日小麦1クオータ=5〜8シリング3〜5リットル1ペニー=銀0.8〜1.4g
1クオータ=291リットル
近世近世のパリ
(1600年)
建築人夫、1日0.5リーヴル0.17日小麦1スティエ=8リーヴル1.6リットル1リーヴル=銀12g
1スティエ=156リットル
江戸時代初期の江戸
(1630年)
大工さん、1日銀1.6匁0.21日米1石=銀25匁2.4リットル銀1匁=純銀3.0g
1石=180リットル
江戸時代後期の江戸
(1820年)
大工さん、1日銀3〜5匁0.15〜0.22日米1石=銀60匁2.2リットル銀1匁=純銀1.35g
1石=180リットル
近代明治初期の東京
(1880年)
大工手間賃、1日33銭0.23日米1升=11銭0.81リットル銀1g=7.6銭
米1升=1.8リットル
ヴィクトリア朝のロンドン
(1900年)
建築労働者、1日55ペンス
建築職人、1日80ペンス
0.03〜0.04日小麦1クオータ=27シリング1.9リットル1ペニー=銀0.47g
1クオータ=291リットル
現代昭和30年代
(1960年)
大工手間賃、1日800円0.013日米10Kg=987円0.16リットル銀1g=10.6円
現代の日本
(2007年)
大工手間賃、1日19,252円0.003日米10Kg=4576円0.15リットル銀1g=54円
  (穀物の重さと量の換算は、1Kg=1.25リットルとしました。)

アテネの4ドラクマ銀貨
紀元前5世紀 16.4g
イギリスのペニー銀貨
13世紀 1.4g
フランスのエキュ銀貨
18世紀 29g

2007.12.22  2008.10.1改訂  2009.5.6改訂