新約聖書に登場する「銀貨」

ローマのデナリオン銀貨
初代皇帝アウグスツス
3.7g
新約聖書の訳本にはたくさんの種類がありますが、現在普通に入手できるのは、およそ次のとおりです。
  ・「文語訳」 1880年発刊。明治訳、元訳ともいう。名訳としても著名。
  ・「口語訳」 1954年、日本聖書協会が発刊。戦後、最も普及した聖書。
  ・「新共同訳」 1987年、日本聖書協会が発刊。現在の最も標準的な聖書。
  ・「新改訳」 1970年、日本聖書刊行会が発刊。プロテスタントの福音派による翻訳。
  ・「岩波訳」 1995〜6年、岩波書店が発刊。東大の学者さんたちによる翻訳。
この新約聖書の中には、「デナリ」(または「デナリオン」)というローマの銀貨がしばしば登場します。
その他にも、「口語訳」では単に「銀貨」などとしているものが、他の訳本では、具体的な貨幣名になっていることがあります。そのような例を調べてみました。(以下で、青字のところは、「口語訳」の引用です。)

●その1 〜 宮の納入金
宮の納入金を集める人たちがペテロのところにきて言った、「あなたがたの先生は宮の納入金を納めないのか」。(マタ17:24)
文語訳では、「納金(をさめきん)」、新共同訳では「神殿税」としていますが、岩波訳では「2ドラクマ」としています。
「ドラクマ(Drachma)」は、ギリシャの貨幣単位で、「デナリオン」とほぼ同価値。1ドラクマが、労働者1日の賃金に相当するといわれています。

ギリシャの4ドラクマ銀貨
16.4g
●その2 〜 魚の中にあった銀貨
海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい。(マタ17:27)
この「銀貨」は、新改訳と岩波訳では「スタテル」としています。「スタテル(Starter)」は、古代オリエント以来の重さ、または銀貨の単位です。
イエスとペトロの二人分の宮の納入金(計4ドラクマ)として、魚の中にあった銀貨を納めるよう言っています。つまり、スタテル銀貨1枚=4ドラクマということになります。

●その3 〜 女がなくした銀貨
ある女が銀貨十枚を持っていて、もしその一枚をなくしたとすれば、彼女はあかりをつけて家中を掃き、それを見つけるまでは注意深く捜さないであろうか。(ルカ15:8)
この「銀貨」を、新共同訳では「ドラクメ銀貨」、岩波訳では「ドラクマ」としています。

フェニキアのシケル銀貨
14.1g
●その4 〜 ユダが受け取った銀貨
時に、十二弟子のひとりイスカリオテのユダという者が、祭祀長たちのところへ行って、言った、「彼をあなたがたに引き渡せば、いくらくださいますか」。すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った。(マタ26:14−15)
これについては、文語訳で「銀」としている他は、すべて「銀貨」として、具体的な貨幣名になっていません。

 文語訳口語訳新共同訳新改訳岩波訳(英語版)
@宮の納入金納金
ヲサメキン
宮の納入金神殿税宮の納入金2ドラクマhalf-shekel
A魚の中にあった銀貨銀貨銀貨銀貨スタテル
(注釈:あるいはシケル)
スタテルshekel
B女がなくした銀貨銀貨銀貨ドラクメ銀貨銀貨
(注釈:ドラクマ)
ドラクマsilver
Cユダが受け取った銀貨銀貨銀貨銀貨銀貨silver

2007.12.1