デューラーの旅日記


 画家デューラー(1471〜1528)が、当時神聖ローマ帝国の一部だったネーデルランドに旅をしたときの日記(1520.7.12〜1521.7.15)です。
 旅日記とはいうものの、日記らしい文章のあるところは少なく、大部分が使ったお金のメモ書きです。

 例えば、次は1520年10月7日のアーヘンでの日記の一部です。
  大きな牡牛の角1組に10ヴァイスペニッヒを払う。
  心付けに2ヴァイスペニッヒ。
  支払いに1グルデンをくずす。
  3ヴァイスペニッヒを賭けで失う。さらに2シュトゥーバーの敗け。
  飛脚に2ヴァイスペニッヒ。
  トマジンの娘さんに4グルデンの値打ちのある聖三位一体の絵を贈る。

 そもそもこの旅の目的は、デューラーが帝室より受け取るはずの画家としての賃金、年額100グルデンが2年間にわたって支払われていないため、ネーデルランドに滞在中の皇帝に誓願するためのものでした。
 別の資料によると、この当時、農夫や職人の収入は月に2グルデン、腕のいい職人や学校教師の収入は月に4グルデンくらいだったそうですから、デューラの賃金は、破格ではないにしても、かなり高給といえそうです。
グルデン金貨
3.5g 20.7mm
 当時のドイツ(神聖ローマ帝国)の貨幣は、皇帝だけでなく各地の諸侯が独自の体系で発行していたため、日記に中にもさまざまな貨幣単位で書かれています。高額の単位はグルデンで共通しているのですが、小額の単位は地域によって、ペニッヒ、ヴァイスペニッヒ、シュトゥーバーなどがあり、それらの関係をこの本の解説記事などを参照すると、次のようになります。

【グルデン】─┬─252─【ペニッヒ】             ・・・ ニュルンベルグ付近
       ├─ 20─【ヴァイスペニッヒ】─2─【ヘラー】 ・・・ フランクフルト、ケルン、アーヘン付近
       └─ 24─【シュトゥーバー】          ・・・ アントウェルペン付近

分類買い物値段現在の日本グルデンの価値
賃金
サービス
デューラーの賃金年100グルデン1200万円12万円
理髪2シュトゥーバー
2ヴァイスペニッヒ
4000円4〜5万円
宿賃3人分20〜84ペニッヒ
3〜8ヴァイスペニッヒ
2〜12シュトゥーバー
30000円0.6〜3.8万円
食べ物朝食3人分1〜4シュトゥーバー3000円1.8〜7.2万円
ローストチキン1羽10ペニッヒ2000円5.0万円
衣類
ほか
本、小冊子0.5〜1ペニッヒ
1〜1.5ヴァイスペニッヒ
1000円1.3〜5.0万円
6〜7ヴァイスペニッヒ5000円1.4〜2.0万円
毛皮の裏つき外套2.25グルデン20000円0.9万円
毛織のシャツ31シュトゥーバー5000円0.3万円
スカーフ25シュトゥーバー2000円0.2万円
絹の布地1エレ(50〜80cm)1グルデン500円500円
 この時代の貨幣の価値について、日記に現れる値段と現在の値段を比較してみました。
 岩波文庫版の解説の中では、ローストチキンの値段を基準にして、1グルデン=5万円、としていますが、その他でも比較してみたものです。(現在の日本の値段は、私の思いのはいった推定です)。

 私は、中世ヨーロッパの金1グラムの価値を、おおよそ、
  ・労賃を基準にすると、30000円
  ・食料を基準にすると、12000円
  ・衣料を基準にすると、 3000円
と試算していますが、そうすると1グルデン(金3.5グラム)はそれぞれ、10万円、4.2万円、1万円くらいとなります。右の表は、多少巾はありますが、それに近い数字になっています。

2007.10.29  2008.4.29改訂  2008.11.12改訂