古代ローマのデナリウス銀貨

ローマのデナリウス銀貨 
3.9g 17.5〜19.0mm
古代ローマの代表的な通貨のひとつに、デナリウス銀貨があります。
紀元前211年ころに始まり、400年以上発行されていた銀貨です。 3.9グラムくらいのほぼ純銀で、その品質はほぼ一定でした。
庶民一家族の一日の生活費が1デナリウスくらいでしたので、その価値が想像できます。

上のコインの表面はアポロ神です。 いやー、何とも、現代にも通じる美男子ですねー。
裏面は4頭立て戦車で、馬の躍動感がいっぱいです。 そしてその下に、「CVIBIVS」と書かれています。

この当時、ローマには毎年3人の造幣責任者がおり、その人たちの宰領でコインのデザインが決められていました。
彼らは、決して前例にとらわれることなく、自由な発想で銀貨のデザインを決めていました。
上のコインの「CVIBIVS」は、このコインの責任者の名前 C.Vibivs.Cf.Pansa(ウィビウス・パンサ)です。

造幣責任者が何年の責任者だったかの歴史的な記録はありませんが、19世紀後半から貨幣考古学者たちは、ヨーロッパ中に多数ある埋蔵金を詳細に調べることによって、各年の責任者を推定しました。 例えば、
   紀元前49年  ACILIVS
   紀元前48年  SASERNA, PANSA, ALBINVS
   紀元前47年  PLANCVS, NERVA, RESTIO
などです。 上のコインの発行年は紀元前48年ということになります。 カエサルがルビコン川を渡った翌年です。



【参考文献】 アンドリュー・バーネット著、新井裕造訳、『大英博物館双書E古代を解き明かす コインの考古学』、学芸書林、1998

 2017.1.1