サビーニ娘の略奪
ローマ共和国発行 デナリウス銀貨
表:サビーニ王のタティウス、左にSABIN、右にTA。
裏:娘を抱きかかえて走るローマ人たち、下にLTITVRI。
紀元前89年 3.9g 18.2mm
紀元前8世紀、ローマに移住してきて都市国家を作った人たちがいました。 総勢3000人くらいの若い男たちです。 彼らは王を選び、王国を建国しました。 紀元前753年の4月21日と言われています。 王の名はロムルスです。
しかし、この国は男がほとんどで、女性が少ないのです。 このままでは、子孫が作れません。ローマ人たちは、謀を巡らしました。
ジャンボローニャ
「サビーニの女たちの略奪」
1580年ころ
■ロムルスは、近くに住むサビーニ族を祭りに招待した。 神に捧げられた祝祭日には、戦闘は禁じられている。 サビーニ族も、一家総出で、招待に応じてローマまでやってきた。
祭りの気分も高潮した頃、ロムルスの命令一下、ローマの若者たちはサビーニ族の若い女たちに襲いかかった。 不意を突かれたサビーニ族の男たちは、妻や子供や老人を守って自分たちの部落に逃げ帰ることしかできなかった。 ・・・ 塩野七生、「ローマ人の物語T」
ローマ人たちは、彼女たちを家に連れ帰り、妻としました。 (家に入るとき、娘を抱き上げて入れました。 現在、花婿が花嫁を抱きあげて新居に入る習慣は、この事件に由来するそうです。)
上のコインは、事件の700年後に、その情景を描いたものです。 表面はその時のサビーニ王のタティウス、裏面は娘を抱きかかえて走るローマ人たち。
当然、サビーニ族の報復が始まりました。 しかし、ローマ人とサビーニ族との争いの間に割って入ったのは、ほかならぬ略奪された女性たちでした。 彼女らは、ローマ人の妻としての相応の待遇を受けていました。 夫と父や兄弟の争いを止めようとしたのです。
争いは平和裏に終り、サビーニはローマと対等の立場で合併し、ローマの建国に協力しました。
2015.11.3