アステカ帝国の斧型銅貨
アステカ帝国の斧型銅貨
15〜16世紀
60.4g H133mm, W154mm, D0.6〜4.5mm
アステカ人たちは、13世紀ころから王国をつくり、近隣の諸部族を征服して大きくなり、1428年には巨大なアステカ帝国を成立させました。
帝国の人口はおよそ1100万人で、首都テノチティトランには20〜30万もの人がが住んでいました。当時の世界最大級の都市です。
町には、壮大な神殿と宮殿が立ち並び、毎日開かれている市は大勢の人たちでにぎわっていました。
カカオ豆
167g 約20cm
(エクアドル産)
カカオの木
(科学博物館にて)
この国で日常の買い物で使われていた通貨は、カカオ豆です。
現在ではココアやチョコレートの原料になっている豆です。1粒が20〜30cmある大きなものです。
カカオ豆では、次のようなものを買えました。
小さなトマト20個 = カカオ豆1粒
トウガラシ5個 = 1粒
小さなウサギ = 30粒
七面鳥の卵 = 3粒
七面鳥(雄) = 300粒
燃料用の松の皮1枚 = 5粒
また、ポーター1回分の労賃が20粒だったそうですから、これが1日の生活費に近かっただろうと想像されます。
次に高額な取引のときに使われたのが木綿布です。Quachtliと呼ばれていました。
丸木舟 = 木綿布1枚
兵士の鎧と盾 = 64枚
毛皮のマント = 100枚
ひすいのビーズの数珠 = 600枚
また、庶民の年間生活費は、木綿布20枚くらいでした。
布とカカオ豆の交換レートは、布の品質やカカオ豆の新鮮度などに影響されたため固定的ではなく、布1枚はカカオ豆65〜300粒に相当しました。
斧型、鍬型銅貨の形状
最も高額な取引で使用されたのが斧または鍬型に作られた青銅貨です。形状や大きさはさまざまでした。
その形状から、スペイン語ではTajadera(押切包丁)、英語では、AxeMoneyまたはHoeMoneyと呼ばれています。
青銅の素材をハンマーで打って引き延ばして、斧や鍬の形に成形したものです。薄い板状で、周囲には縁がつけられています。
銅貨1枚がカカオ豆8000粒に相当したという記録もありますが、そうすると、銅貨1枚は、庶民の1〜2年の生活費に相当します。
1519年、スペインのコルテス軍が侵入し、1521年アステカ帝国は滅亡しました。
1546年、スペインは巨大な銀山を発見し、そこからとれる金・銀で、大量の金・銀貨をつくりました。
スペイン人の圧政とヨーロッパから伝来した疫病に人口は激減し、1600年には100万人にまで減少しました。
首都は破壊され、その上にメキシコシティが建設されました。
2011.7.24 2013.1.26 カカオ豆の画像追加