平安通宝

平安通宝  3.4g 23.5mm

「平安通宝」とは不思議なコインです。
独特の銭銘を刻み、端正な文字です。 他の銭をコピーしたものではありません。 銭径にやや大小があるものの、書体に変化は全くありません。 かなり熟練した人たちによって、何等かの特殊な意図をもって作られたもののようです。
安南王朝の一時期に「平安」という年号があったため、かつては安南銭とされていたこともありましたが、材質や製作方法などから現在では日本製とされています。

しかし、その具体的な鋳造場所については、次のような説があります。
(1).長崎で貿易銭として鋳造されたという説。 「元豊通宝」などの長崎貿易銭(1659〜85年発行)や鄭成功の依頼によって作られた「永暦通宝」(1651年)と材質や製作方法に似通ったところがある、というのが根拠です。
(2).細川氏が寛永元年〜5年(1624〜28)に、小倉にて新銭を鋳造したとの記録があり、それがこの平安通宝ではないかとする説。
(3).遺跡からの出土例9例のうち7例が東北地方なので、東北のどこかで作られたという説。 (⇒右図参照、文献Aによる)。

【参考文献】
  @櫻木晋一、「貨幣考古学序説」、慶應義塾大学出版会、2009
  A高桑登、「国内出土の平安通宝集成」、出土銭貨第15号、2001

  2011.5.2 / 2012.8.15