座銭という絵銭

絵銭 〜 吉田駒曳

「絵銭」とは銭の形をしていますが、貨幣ではないものです。
室町時代の末期から、明治・大正のころまで、さまざまな人たちが、さまざまの目的で作ったようです。
大名の祝賀用、寺社の上棟式用、商家の記念品、子供の玩具、好事家の戯作品、やくざの賭博用、などど想像されていますが、詳しい事情は殆ど分かりません。

そのような中で、背(裏面)が寛永通宝のそれにそっくりな一群があります。銭を作る「銭座」の人たちが遊びで作ったものではないかと想像されています。そのため、これらは「座銭」と通称されています。
上の銭は座銭の一種で、「吉田駒曳」または「吉田牛曳」と呼ばれているものです。(馬か牛かが定まっていないのは興味深いところです)
人物と馬(牛?)のユーモラスな表情、文字と絵の絶妙のバランス、デザイナーに拍手を送りたくなります。


【参考文献】
中橋掬泉、「新撰古銭大鑑」、大文館書店、昭和29
万国貨幣研究会編、「絵銭の相場」、万国貨幣洋行、昭和47

2009.9.16