亜鉛のデナリウス
亜鉛製のデナリウス貨
140〜143年発行(「デナリウス銀貨」の発行年)
表面:アントニヌス・ピウス帝、ANTONINVS PIVS P P TRP COS III
裏面:雷電、PROVIDENTIAE DEORVM
径17〜18mm 2.2g
ローマ帝国の一部
「世界史地図」、吉川弘文館
「デナリウス銀貨」は、紀元前後の400年間、ローマ共和国とローマ帝国のもっとも基準となっていたコインです。重さ3〜4グラムのほぼ純銀で、非常に信頼性のある貨幣でした。
ところが、上に掲載したコインは、デザインはローマ帝国のデナリウス銀貨ですが、材質は「亜鉛」です。
古代、亜鉛の存在は黄銅として銅との合金の形では知られていましたが、単体では殆ど知られていませんでした。
この時代に亜鉛を精錬できた唯一の民族は「ダキア人」です。 ダキアは、ドナウ川の北側にあった国で、しばしばローマ帝国と争いましたが、106年トラヤヌス帝によって征服され、ローマの属州となりました。 それ以降、ダキアはローマ化し、「ルーマニア」と呼ばれるようになりました。
上のコインは、このローマ化されたダキア人たちによって発行されたものと思われます。
亜鉛は、現在では卑金属の仲間ですが、この当時はもしかして銀と同等の貴金属だったのかもしれません。
2009.2.15