イスラームのディルハム銀貨


  9世紀イスラームのディルハム銀貨

  イスラームが成立した当時、ビザンツ帝国やササン朝ペルシャの貨幣をそのまま使ったり、それを模倣した貨幣を発行していました。
  西暦695年、ウマイヤ朝の第5代のカリフ、アブド・アルマリクは、イスラーム独自の貨幣制度を整えました。 貨幣のデザインから、偶像を排し、クルアーン(コーラン)などの言葉を刻みました。 このデザインはこの後数百年間踏襲されました。

  ここに示したのは、9世紀初頭のアッバース朝のディルハム銀貨です。

NoArabic文字音価意 味説 明
@لا اله الاlâ ilah illâThere is no God except アザーン(礼拝の言葉)の一節です。
『アッラーの他に神はいない。彼にパートナーはいない。』
Aالله وحدهAllah wahdahuAllah alone .
Bلا شريك لهlâ sherîk lahuThere is no partner to him .
Cبسملللهbismillahin the Name of Allah このコインについての説明です。
『アッラーの名において、このディルハムは、バグダッドで、194年に発行された。』
ヒジュラ(ヘジラ)暦の194年は、西暦の809〜810年になります。
Dضرب هزا الzuriba hazâ elminted this
Eدرهمdirhemdirhem(貨幣名)
Fمدنة ال سلامMedînat es SalâmBaghdadのこと
Gسنت اربع تسعين معتsnat arba' tis'in mi'atyear 4 90 100(AH194年)
HمحمدMuhammadムハンマド アザーンの一節です。
『ムハンマドはアッラーの使徒である。』
Iرسولsasûl使徒
JاللهAllahアッラー
Kمحمد  رسول  الله Muhammad sasûl AllahH〜Jに同じH〜Jに同じ
Lارسلهarsalahuhe sent him クルアーン(コーラン)の一節です。
『かれこそは、導きと真理の教えをもって使徒を遣し、仮令多神教徒たちが忌み嫌おうとも、凡ての宗教の上にそれを表わされる方である。』
(9悔悟の章、33節。日本ムスリム協会訳)
Mب لهرىbi 'l hudâwith the guidance
Nو دن ا حققwa dîn -el haqqand a religion of the truth
Oليظهره-li yughîrahuin order that he might cause it to be bright
Pعلى ا دن'alâ -ed dînover the religion
Qكلهkollihiall of it
Rولو كره المشر كونwalau kariha -el mushrikûnalthough polytheists dislike
  クーフィー体(Kufic)と呼ばれる書体です。 角ばった書体で、簡素化され、美麗化されています。 現在でも装飾用の文字としてしばしば使われています。
  コインの中で、一部の文字は、コインの横幅いっぱいに引き伸ばされています。


2.9g 20.0mm

参考資料:
  本田孝一ほか、「アラビア文字を書いてみよう読んでみよう」、白水社、1999
  R.Plant, " Arabic Coins and how to read them ", Seaby, 1973
  M.Mitchiner, " Original Coins and Thier Values - THE WORLD OF ISLAM ", Hawkins Publications, 1977
  アラビア語ちゃんねる

2006.8.19