空首布

● 空首布
空首布
  中国に鉄器が出現したのは、紀元前7〜6世紀のころのことで、春秋の覇者たちが、しのぎを削っていたころです。
  当初、鉄は農具として使われました(鉄の武器が出現したのは漢代からです)。
  農具には「かま」、「鎛(ハク=除草用のくわ)」、「銭(すき)」などがあり、これらの出現は、農業生産力を飛躍的に高くしました。
  当然人口も増え、覇者たちも一層強大になり、商工業も発達し、貨幣が生まれてきました。
  そして生まれたのが、この「鎛」をモデルにした青銅の貨幣です。
 文献@より

  この青銅貨は、人の体に見立てられます。
  上部は首(頭)です。 中は空っぽですが、黄土が詰まっています。 この黄土は製作当時のものです。
  下部は胴体で、肩をいからし、両足をふんばっているように見えます。

  「鎛(ハク)」の字に良く似た「搏(ハク、フ)」は、打ったりたたいたりすることを意味します。 麻をたたいて柔らかくすると「布(フ)」ができるので、搏=布となります。 発音も同じです。 いつしか、この形の貨幣は「布幣」と呼ばれるようになりました。

  空っぽの首の布幣なので、この貨幣は「空首布(くうしゅふ)」と呼ばれています。




身体測定 体重23.9g、身長85mm、足幅47.3mm、肩幅43.5mm、頭部の厚さ13.4mm、胴体部の厚さ1.0mm


  重ね合わせは出来そうもなく、今にも首が折れそうな不安定な姿です。 
  ”1枚1枚を丁寧に扱うから、そんな心配は無用です”、古代人はそう言っているのかも知れません。
  それにしても、2600年前の人たちの製造技術、すばらしいものです。

参考文献:
  @西嶋定生、「中国古代の社会と経済」、東京大学出版会、1981

2005.10.1